研究概要 |
悪性グリオーマ、特にグリオブラストーマの予後は診断・治療技術の向上にもかかわらず依然として改善せず、その原因は腫瘍細胞の増殖能と強い浸潤能、そして放射線や化学治療への抵抗性にあると考えられる。最近の細胞生物学的及び分子生物学的知識の蓄積により、細胞周期制御機構の異常が治療抵抗性を決定する重要な要因となっていることが明らかになりつつある。多くの抗癌剤や放射線による抗腫瘍治療は、癌細胞がチェックポイントに障害を持つという性質を期せずして利用したものであることが分かってきた。本研究は、癌細胞のG2-M期チェックポイント機能とその破綻による細胞死誘導機構を解析し,従来の治療に抵抗性を示す悪性グリオーマに対して特異的かつ効果的な新戦略を考案するための基礎的検討を行うことを目的として行った。G2チェックポイント機能が低下した細胞にDNAダメージを与えると、G2チェックポイントを乗り越えて分裂期に入り、10時間〜20時間metaphaseのままで停止した後、崩壊する現象(分裂期崩壊)をタイムラプス顕微鏡によって観察することが出来た。また、この分裂期崩壊過程は分裂期チェックポイント機能に依存することが明らかになった。つまり、腫瘍細胞はG2チェックポイント異常があることによって抗癌剤で細胞死が誘導されるが、逆に更に遺伝子異常が進んでMチェックポイントに異常が生じると、細胞死が有意に抑制されることが分かった.本研究の遂行により、腫瘍が薬剤に対して抵抗性を獲得する新たな機序が明らかになった。
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