研究概要 |
1、研究目的 本研究では、本疾患に特異的な遺伝子異常や遺伝子発現の異常を探索した。以下の3つの視点から研究を行った。 1)血液サンプリングによる家族発症もやもや病症例の遺伝子解析 2)家族性もやもや病における表現促進現象とtriplet repeatの伸張の検討 3)手術中に得られた患者の脳脊髄液のサイトカインの解析 2、対象および方法 1)家族性もやもや病関連遺伝子の探索(17q25の領域) 以下の3つの手法で探索を行った I)bioinformaticsの手法を用いた遺伝子探索 II)既知遺伝子に対する変異解析 III)SNPs解析 2)家族性もやもや病における表現促進現象とtriplet repeatの伸張の検討 もやもや病と141例を対象として17q25の領域のtriplet repeat伸張の有無を検討した。 3)手術中に得られた患者の脳脊髄液のサイトカインの解析 手術中に得られる脳表面の脳脊髄液のサイトカインの測定を行った。測定はELISA法で行った。 3、結果 1)遺伝子探索 約250のUnigene Clusterをアミノ酸に翻訳して、ドメイン検索や他の機能タンパクとの相同性解析を行ったが、既知遺伝子の他には、明らかに原因遺伝子として適当なUnigene Clusterを検出することはできなかった。既知遺伝子に対する変異解析これまでに、DNAI2、AANAT、PSR、HCNGP、HN1、SGSH、SYNGR2、EVPL、TIMP2などの変異解析を行っているが、本症に特異的な遺伝子変異は認められていない。TIMP2の8つのSNPについては、患者特異的なSNPは認められなかった。 2)家族性もやもや病における表現促進現象とtriplet repeatの検討 家族性もやもや病において,表現促進現象の存在が示唆された。もやもや病を発症者において繰り返し数が10である伸長を認めたが,今回検討した17q25の領域では、家族性もやもや病家系における発症症例と非発症症例では,有意差は認められなかった。 3)髄液中サイトカイン測定 もやもや病患者においては、b-FGF、HGFの高値が測定された。
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