研究概要 |
本研究は,脳腫瘍の化学療法に用いられる抗癌剤の分子作用機序および薬剤耐性関連遺伝子(MGMT, MDR1,MRP1など)の発現に基づいて薬剤感受性を決定し,個々の腫瘍に最適な抗癌剤を選択的に適用し,また,薬剤耐性腫瘍に対して耐性機序克服による抗癌剤の効果増強を図ることである. 本邦で最も汎用されているクロロエチールニトロソウレアの感受性はMGMTと関連しており,ヒト脳腫瘍摘出標本において抗MGMT抗体による免疫染色で検討したところ,標本の多くでMGMT陽性細胞が検出されるが,それらの陽性率は低値から高値まで多様であった.さらに,陽性細胞の分布も不均一であった.MGMTの多寡によるMer+/-の判定基準では10%程度以下がMer-腫瘍に相当するとしてきたが,MGMT陽性率の標準化および分布パターン,腫瘍の活性細胞層,周辺浸潤層,壊死層ならびに血管との関連につき解析することが,今後の重要な課題の一つである. MGMTは腫瘍細胞の遺伝子発現および代謝活性,組織構築の不均一性を反映しているものと推定されるが,今後,MGMT陽性率の定量標準化によって抗癌剤の感受性および適応基準,最適投与スケジュールの決定に有効な癌剤治療の指針がもたらされる.
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