研究概要 |
閉塞性脳血管障害の治療に資するため、FGF-2発現ウイルスベクターを用いた、遺伝子治療、およびこのベクターと骨髄細胞を用いた再生医学と遺伝子治療の合体による治療研究を行っている。 本研究費を用いた研究で行い得た研究として以下の二つが挙げられる。 (1)ラット中大脳動脈閉塞モデルにおけるFGF-2発現アデノウイルスベクターの脳室内投与による治療研究 (2)無毒化、複製不能型組み換え単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターの開発と、それによる骨髄細胞への遺伝子導入の研究 (3)上記ウイルスにより遺伝子導入をおこなった骨髄細胞移植によるラット中大脳動脈閉塞モデルの治療研究 それぞれの研究成果を詳述する。 (1)に対しては、中大脳動脈を2時間閉塞後にFGF-2発現アデノウイルスベクターの脳室内投与することにより、梗塞巣を半減することができた。また、神経脱落症状をスコアー化すると、未治療群に比して、有意に神経症状の改善を認めた。 (2)骨髄細胞はいろいろな細胞に分化可能であり、再生移植医療に有望な細胞であるが、この細胞への遺伝子導入効率は極端に低く、遺伝子導入が困難であった。一方われわれはICP4(-),ICP34.5(-),VP-16(-)の組み換え型HSVベクターを開発し、無毒かつ複製不能型ベクターを樹立した。本ベクターを用いて、骨髄細胞に遺伝子を導入したところ100%の骨髄細胞に遺伝子導入が可能であった,以上の結果を踏まえて、HGF, VEGF発現HSVベクターを開発し、FGF-2発現ベクターは開発中である。 ラット中大脳動脈を2時間閉塞後骨髄細胞単独投与により、ある程度の神経症状の改善を認めたが、上記HGF発現HSVベクターによる遺伝子導入を行った骨髄細胞を移植することにより、その改善度は相乗的に増加した。今後は分化過程の詳細も解析を行う予定である。
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