研究概要 |
軟骨への分化能を有する未分化間葉系細胞としてp53KOマウス由来のN1511細胞を用い,この細胞をBMP2での分化誘導する前後の,核抽出液ならびに細胞質抽出液を調整した.最初にXI型コラーゲンα2鎖遺伝子(col11-a2)のプロモーター中の軟骨特異的エレメント(24bp)への抽出液中の蛋白の結合をEMSAで解析したところ,複数のバンドが認められた.これらは抗Sox9抗体ではsupershiftしなかった.そこで次にcol11-a2の24bpエンハンサーをbaitとして,これに結合する蛋白を分離するために,まずこの24bpに上流,下流のそれぞれ26bpを含む50bpのDNAを結合させた2つのDNAアフィニティーカラムを作成した.上記の抽出液をこの2種のカラムに相次いで結合,溶出させた.その結果SDS-PAGEでは,35kd前後の2つのバンドが得られた,現在,これらのバンドに相当する蛋白を溶出しトリプシン消化後,MS/MS解析中である. 一方,軟骨修復実験への取りかかりとして,家兎の自家骨髄から穿刺にて得た未分化間葉系幹細胞(MSC)を培養し,この細胞にex vivoでCDMP-1遺伝子を導入した後に,膝関節内に作成した関節軟骨全層欠損部に移植して軟骨修復を図った.その結果CDMP-1遺伝子導入により,まずin vitroではMSCの分化培養中の細胞死が抑制されるとともに,MSCからの軟骨分化が促進された.またそのような軟骨分化に方向づけられたMSCの自家移植により,家兎の全層軟骨欠損の修復は良好なものとなった.再生軟骨はII型コラーゲンに富む硝子軟骨であり,マトリックスの微細構築の再建も良好であった.経時的に深層部は軟骨下骨に置換され,また周囲軟骨とのintegrationも良好となった.
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