研究概要 |
軟骨修復促進を目指した細胞移植実験で,間葉系細胞をCDMP1遺伝子導入で増殖因子シグナルを制御することにより,良好な修復を誘導できることを示した。さらに間葉系細胞の分化度を調整・制御することにより,修復硝子軟骨の関節面表層に至るマトリックス微細構築のリモデリングが優れたものとなることを明らかにした。続いて高密度間葉系細胞の関節内移注による修復を検討するために、ヌードラットの膝関節軟骨欠損モデルにN1511細胞(未分化間葉系細胞)を様々な分化度に誘導して投与した。その結果、軟骨細胞lineageに誘導した投与細胞は、効率よく軟骨変性部や軟骨欠損部に接着することが明らかとなり、さらにこのような手法により軟骨修復の促進が可能で、投与細胞は関節内で軟骨細胞にまで分化し、修復に参画することが明らかとなった。他方で未分化なES細胞、あるいは完全に分化した軟骨細胞では不十分な修復や異所性の軟骨形成などのため、このような細胞移注治療には適さなかった。このことは広範囲の変性軟骨に対しても、一定の分化度に間葉系細胞を制御さえすれば、高密度の細胞移注が有効な手段となる可能性を示している。一方、新たな軟骨分化制御因子を探るために、軟骨分化誘導前後の間葉系細胞(N1511)の核抽出液中から,XI型コラーゲンα2鎖遺伝子(Col11a2)のプロモーター中の軟骨特異的エレメントに結合する5つのSDS-PAGE上のバンドを得た.これらを部分精製しLS-MS/MS解析を行った結果、転写制御に関連する可能性のある候補遺伝子を得た。それらについて全長cDNA作製、各組織での発現解析を行うとともに、N1511細胞に導入し、軟骨分化に分化に及ぼす影響を解析する段階である。
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