研究概要 |
本研究の目的は、Wntの可溶型受容体の一つであるFrzb遺伝子の関節疾患に対する治療効果および同遺伝子に関連した分化・アポトーシスのメカニズムを解明することである。まず、OAにおける軟骨細胞のアポトーシスのメカニズムを明らかにするため、その病態で重要な役割を担うことが知られているheat shock protein 70 (HSP70)に注目し実験を行った。HSP70遺伝子を軟骨細胞にアデノウイルスを用いて遺伝子導入し、過剰に発現させることでNOおよびstaurosporineで誘導される軟骨細胞のアポトーシスをほぼ完全に制御できることを明らかにした。また、ウェスタンプロッティングを用いた実験から軟骨細胞のアポトーシス機構の一部が明らかになった。次に、Frzb遺伝子の過剰発現がRA滑膜細胞およびOA軟骨下骨骨芽細胞に及ぼす影響を評価し、治療効果の可能性について検討した。Frzb遺伝子をそれぞれの細胞にリポフェクション法を用いて遺伝子導入し、過剰に発現させた後に炎症性サイトカイン(IL-1β,IL-6,IL-8,TNF-α)の発現の変化をRT-PCR法を用いて検討した。RA滑膜細胞において認める炎症性サイトカインの発現は、Frzb遺伝子の過剰発現によって変化を認めなかった。OA骨芽細胞において、内在性のFrzb遺伝子の発現を認め、Frzb遺伝子の過剰発現によって炎症性サイトカインの発現は低下を認めた。このことからOA病態における軟骨下骨・関節軟骨での異常分化メカニズムが存在する可能性およびFrzbのOA治療効果の可能性が明らかになった。
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