我々は、非荷重状態では、副甲状腺ホルモン(PTH)間欠投与によるc-fos発現亢進が抑制されるため骨形成増加効果が減弱すること、PTH投与により未熟な骨芽細胞の割合が増加するためRANKLの発現が増加し、破骨細胞形成が亢進すること、を明らかにしてきた。 今年度は、非荷重状態の骨髄細胞における、血管内皮細胞関連因子と骨形成能との相互関係を明らかにする目的で実験を行った。後肢を非荷重にした尾部懸垂モデルマウスの脛骨骨髄細胞と、骨芽細胞株と血管内皮細胞株を用いた。 フロサイトメトリーによる解析では、非荷重にすると、骨髄細胞中のplatelet endothelial cell adhesion molecule-1(PECAM-1、CD31)の発現が有意に低下した。再荷重することで、その低下は回復した。しかし、angiopoietin-1、angiopoietin-2、Flk-1、VE-cadherinには変化がなかった。培養した骨髄細胞の培養液にPECAM-1抗体を添加すると、アルカリフォスファターゼ(ALP)陽性CFU-fの形成が低下した。骨芽細胞株とPECAM-1を発現する血管内皮細胞株を共存培養すると、骨芽細胞株単独の場合よりも、ALP産生量が有意に増加した。そこに、PECAM-1抗体を添加すると、ALP産生量増加分は抗体量依存性に減少した。しかし、PECAM-1を発現しない血管内皮細胞株を共存培養しても、骨芽細胞株単独の場合とALP産生量に差がなかった。 これらの実験結果から、非荷重による骨形成能の低下は、骨髄細胞におけるPECAM-1発現の低下と関連していることがわかった。骨髄細胞内のPECAM-1は、荷重・非荷重のセンサー分子として働いている可能性がある。
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