平成14年度、p53遺伝子欠損マウスの膝関節を伸展位でバンデージ固定し、p53遺伝子の欠損が、非荷重・不動による海綿骨量減少と骨形成低下を防止することを明らかにした。骨髄細胞内のp53遺伝子を介したシグナル伝達の亢進が、不動性の骨量減少に関与していることを示した。このようなin vivoの現象は、骨髄細胞培養の結果と一致していた。また、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)遺伝子欠損マウスでは、非荷重により低下した骨形成と海綿骨量は、再荷重しても回復が認められなかったことから、非荷重後の再荷重による骨形成の回復にはiNOS由来の一酸化窒素が必須であることがわかった。 平成15年度、非荷重状態では、PTH間欠投与によるc-fosの発現亢進が抑制され、アルカリフォスファターゼ陽性CFU-fの形成およびosteocalcin発現の増加が抑制され、骨形成増加効果が減弱すること、非荷重状態では、PTH投与により未熟な骨芽細胞の割合が増加するためRANKLの発現が増加し、破骨細胞形成が亢進すること、を明らかにした。 平成16年度、非荷重による骨形成能の低下は、骨髄細胞におけるPECAM-1(CD31)の発現低下と関係していること、非荷重後の破骨細胞分化の亢進は、骨髄細胞におけるPTHシグナルを介したRANKL発現亢進と関連していること、を明らかにした。 3年間の研究から、非荷重により、骨髄細胞において、骨芽細胞系細胞はp53遺伝子を介したアポトーシスシグナルとPECAM-1の発現低下により分化異常が生じ、骨形成が低下していること、破骨細胞系細胞はPTHシグナルを介したRANKLの発現亢進により分化が促進され、骨吸収が増加していることがわかった。
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