遺伝子レベルでの骨系統疾患(骨・関節の遺伝子病)の診断方法を確立し、同定した遺伝子変異について臨床像と遺伝子型との関連を検討し、骨系統疾患の病態を明らかにすることを目的として研究を行ない、本年度は以下のような成果を得た。 1.PCR(polymerase chain reaction)においては、被増幅部の塩基配列とprimerの塩基配列の相同性を考慮すべきであり、遺伝子診断、遺伝子変異の検索において、目下汎用されているPCR-直接シーケンス法には、その信頼性に問題があることを発見した。 2.新たなひとの遺伝子、L-SOX5(long form of Sox5)を同定し、遺伝子構造を決定し、発現解析を行った。 3.X-linked dominant chondrodysplasia punctataにおけるEBP(emopamil-binding protein)遺伝子の変異をスクリーニングし、計3つの過去に報告のない変異を発見した。また、X染色体のメチル化によるアレルごとの不活性化の状態の差異により、アレルごとの遺伝子発現の差異をきたし、同一のEBP変異の保持者でも、異なった表現型を示す例があることを報告した。 4.偽性軟骨無形成症、多発性骨端異形成症患者におけるCOMP(cartilage oligomeric matrix protein)遺伝子の変異を検索した。9つの新たな変異を同定し、臨床像と遺伝子型の相関(低身長の程度と変異の部位との対応)を発見した。タンパク質が欠失するタイプのCOMP変異を、始めて報告した。
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