研究概要 |
未分化間葉系細胞から骨芽細胞への分化には多くの過程が存在し、生物が高等になれば再生能力が低下し骨形成にも時間がかかることが再生医療の大きな問題となっている。現在臨床使用されている骨量減少を抑制する薬剤には積極的に骨形成を促進させる作用を持つものは殆どなく、唯一骨形成を目指すものとして骨形成因子(BMP)そのものがあるがヒトでは大量に必要なこともあり、臨床レベルで使用するには至っていない。今回単独であるいはBMPとの組み合わせで骨形成を促進する低分子化合物をスクリーニングした結果、以下の3つの薬物が骨形成を促進させることが判明した。(報告論文) 1.低分子量GTP結合蛋白質Rho関連キナーゼ(ROCK)阻害薬 2.MAP kinase kinase (MEK)阻害薬(PD98059,U0126) 3.抗リューマチ薬(T0614) 3の作用機序はCbfa-1の発現に関与することなくosterixの発現を上昇させることで現在osterix promotorの解析を計画している。一方1,2の作用を検討するために阻害薬で処理した細胞やkinaseのactive formやdominant negative formのcDNAを導入発現した細胞を注意深く検討したところ、actin細胞骨格のdynamicsが大きく変化していることが示唆された。そこで直接actin dynamicsを調節するcytochalacin DやlatrunculinB等を用いて骨芽細胞であるMC3T3-E1における骨分化を詳細に検討してところ、actin細胞骨格を一度バラバラにしてfocal adhesionが消失し再構築が起こるときにBMPを作用させると、きわめて高い骨分化が観察された。このことは細胞骨格を調節することで有効な骨分化、骨形成を起こさせる可能性を示唆させるもので、今後細胞骨格の調節による骨形成再生治療の臨床応用をめざしたい。
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