研究課題/領域番号 |
14370481
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
後藤 文夫 群馬大学, 医学系研究科, 教授 (00092015)
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研究分担者 |
齋藤 繁 群馬大学, 医学系研究科, 助教授 (40251110)
須藤 亮 群馬大学, 医学部, 助手 (80312875)
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キーワード | 神経障害性疼痛 / 局所麻酔薬 / テトラカイン / ニューロパシックペイン / 神経栄養因子 / ニューロン成長円錐 |
研究概要 |
脊髄神経が損傷されると、皮膚の傷が治った後も感覚異常が持続し、軽い接触、寒冷刺激などで痛みが誘発される「神経障害性疼痛(ニューロパシックペイン)」が発生する。特に、胸部手術後に発生しやすく、難治性の疼痛である。われわれはその機序解明と治療法の開発に向け、ラットの肋間神経を損傷することによって新たな神経損傷モデルを作成し、感覚異常の発現と脊髄後角ニューロンの神経伝達物質受容体との関連を検討した。また、グリア細胞の変化や電気生理学的な変化の検討を進めるべく次年度へ向けた準備を行っている。すでに、髄腔内カテーテルから投与したセロトニン受容体拮抗薬によって、慢性疼痛モデルの疼痛域値が上昇することを確認しているが、肋間神経損傷モデルにおけるそれらの役割も検索した。 一方、高濃度の局所麻酔薬が発生・再生過程の神経細胞、特にニューロンの成長円錐部や神経突起部に強い障害を与え、一定時間の後には不可逆的な変化をもたらすことを報告した。特にリドカインやテトラカインは強力な障害作用を持つが、神経細胞膜表面に受容体が発現している神経栄養因子、GDNF、BDNF、NT-3などを添加すると障害の回復が促進された。また、これらの栄養因子の作用は濃度依存的であった。神経細胞障害時の細胞内カルシウム濃度を蛍光色素を用いて測定したところ、局所麻酔薬に暴露された直後から成長円錐部のカルシウム濃度が上昇しはじめ、次第に神経突起から細胞体部へと濃度上昇が拡大することも確認された。これらの変化は、細胞内カルシウムのキレート剤によって前処置を行っても抑制されないことから、細胞膜の機能的損傷によって細胞外カルシウムが流入し、神経細胞を破壊へと導くことが推察された。
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