研究概要 |
<臨床研究>(1)高濃度テトラカインを用いた三叉神経ブロックは、治療効果、感覚変化及び電気的知覚閾値(CPT)のデータから、副作用が少なく、効果が長く、神経の再生が可能な治療であることを確認した。(2)PETを用いた人の研究では、疼痛刺激により前帯状回、島皮質、二次体性感覚野などの血流が増加し、その増加が選択的セロトニン再取り込み阻害薬によって抑制されることが観察された。 <基礎研究>(1)局所麻酔薬は、発生過程の神経細胞、特にその成長円錐部や神経突起部に強い障害を与え、不可逆的な変化をもたらすが、局所麻酔薬の種類によって差があり、リドカインやテトラカインに比較的強力な障害作用を認め、臨床データと相関する。(2)神経栄養因子(NGF,GDNF,BDNF,NT-3)の神経細胞に対する作用を、リドカインおよびテトラカイン暴露後の培養組織を用いて検討し、NGF以外の3因子は背側神経核ニューロン成長円錐の再生を促進することが証明された。(3)局所麻酔薬による神経損傷時の細胞内カルシウムイオン動態を検討し、局所麻酔薬は神経成長円錐部の細胞膜機能を傷害することにより細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させることを確認した。細胞内カルシウム濃度は局所麻酔薬に暴露された直後から成長円錐部で上昇し、次第に神経突起から細胞体部へと拡大した。これらの変化は、細胞内カルシウムのキレート剤によって前処置を行っても抑制されず、細胞膜の機能損傷によって細胞外カルシウムが流入し、神経細胞を破壊へと導くことが証明された。(4)ラット術後痛モデルでの局所神経伝達物質の放出量をマイクロダイアライシスを用いて測定し、セロトニンが局所で放出されていることが確認された。(5)下行性抑制系は5-HT2受容体やムスカリン性アセチルコリン受容体を介して疼痛受容域値を低下させることを行動薬理学的実験で証明した。(6)ラット肋間神経損傷モデルを用いて感覚異常の発現と脊髄後角ニューロンの神経伝達物質受容体の関連を検索し、両者の相関を実証した。
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