研究課題/領域番号 |
14370486
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
荒井 俊之 京都大学, 医学研究科, 助教授 (80175950)
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研究分担者 |
難波 恒久 京都大学, 医学研究科, 助手 (30283609)
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キーワード | T細胞 / 酸化ストレス / 6-ホリミルプテリン / 免疫反応 / サイトカイン産生 / 細胞増殖 / NF-κB / レポーターアッセイ |
研究概要 |
虚血再潅流時の酸化ストレスが単球ならびにリンパ球のサイトカイン産生におよぼす影響を検討するため、本年は以下の研究を行った。 1.酸化ストレスがT細胞におけるサイトカイン産生ならびに細胞増殖におよぼす影響 外部からの過酸化水素の負荷はT細胞では細胞死を誘導するので用いず、内因性の酸化ストレスとして細胞内で過酸化水素を産生する6-ホルミルプテリン(6FP)を用いた。サイトカインは培養液中のIL-2とIFN-γの量をELISAにて測定した。細胞増殖はDNAに取り込まれた蛍光色素(CyQUANT)の量をフルオロメトリーにて測定することにより、評価した。刺激には、まず細胞分裂促進剤(mitogen)であるPHAとPMAを合わせて用い、次いでT細胞受容体活性化抗体であるCD3/CD28を用いた。結果、どちらの刺激においても、6FPは濃度依存性にT細胞のサイトカイン産生と細胞増殖を抑制した。これにより、酸化ストレスがT細胞のサイトカイン産生ならびに細胞増殖といういわゆる免疫反応を抑制することが分かった。 2.酸化ストレスがT細胞におけるNF-κBの活性化におよぼす影響 1.と同様に内因性の酸化ストレスとして6FPを用いた。T細胞におけるサイトカイン産生や細胞増殖を司る転写因子であるNF-κBの活性化におよぼす影響を検討するため、まずT細胞をPHAとPMAで刺激した時のNF-κBの核内移行におよぼす6FPの影響を、結合アッセイを用いて検討した。次いで、核内でのNF-κBとDNAの結合におよぼす影響(転写活性)を、NF-κBのレポーターベクターをPHAにより幼弱化させたT細胞に取り込ませ、レポーターアッセイを用いて検討した。結果、6FPはNF-κBの核内移行には影響をおよぼさなかったが、転写活性は濃度依存性に抑制した。これにより、1.で酸化ストレスT細胞の免疫反応を抑制したのは、転写因子であるNF-κBの核内移行を阻害するのではなく、核内移行したNF-κBがDNAに結合するのを阻害するためであるということが分かった。 以上1ならびに2の研究を通じて、酸化ストレスが免疫能を低下させるという概念の正当性が証明されると同時に、逆に人為的酸化ストレスにより免疫反応を制御しうる可能性が示された。
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