研究課題
本研究の目的は、市販のWindows搭載パソコンで動作可能な胎児心電図ソフトウエアを開発し、胎児手術におけるモニタリング法を確立することにある。ソフトウエア開発には、実際の胎児心電図波形が不可欠であるので、平成14年度は以下の手段を用いて、実際の生信号を抽出した。まず、40名の帝王切開術患者の母体体表電極から胎児心電図波形を含む信号を脳波計により取得し、この信号をA/Dコンバーターを介してパソコンに取り込み、新たに開発したデータ取得用ソフトウエアを用いてパソコン上にデジタルデータとして保存した。胎児心電図ソフトウエア開発の主眼は、母体腹部電極から得た胎児心電図波形に含まれる母体由来の心電図波形を除去し、純粋な胎児由来の心電図のみを抽出し、胎児心拍変動パターンを得ることにある。当初考えた母体成分除去方法を以下に述べる。1.母体心電図のR波のピークを指標としたパターン認識によって母体+胎児心電図波形より母体由来の波形を抜き出し、これを加算平均した標準的母体心電図波形を得る。2.母体+胎児心電図から1で得られた標準的母体心電図波形を差し引き、胎児心電図成分のみを抽出する。しかし、実際に帝王切開術症例から得られた母体十胎児心電図波形の母体成分は、呼吸性変動により一拍毎の心電図波形の大きさが変化するため、この方法で母体成分を完全に除去することは不可能であった。そのため、現在、以下の方法に基づきソフトウエア開発を行っている。1.母体十胎児心電図波形において、母体心電図R波の前後数ミリ秒の信号を無視する。2.この間に出現した胎児心電図波形は、前後の胎児心電図波形の間隔を学習させるプログラムによって補完し、胎児心拍数をカウントする。以上のプログラムは、平成15年度の初めには完成する見込みである。