研究課題
胎児手術(母体内で胎児の手術を行う)の術中胎児監視を行うため、市販のWindows搭載パソコン上で動作する胎児心電図ソフトウエアを開発した。胎児心電図モニタリングのハードウエア部分は、脳波計を用い、ここから導出した信号をA/Dコンバーターを介してパーソナルコンピューターに取り込む仕様とした。ソフトウエアの開発上の問題は、母体の体表電極から導出した胎児心電図波形には母体由来の心電図波形が含まれる点にある。そこで以下の手法を用いて、胎児心電図波形のみを抽出した。1.母体の胸部誘導から導出した心電図波形から母体由来のQRS波形を同定し、これを指標にして母体腹部から導出した胎児波形成分を含む波形から母体由来のQRS波形を選別した。2.これによって、胎児QRS波形のみを抽出した3.母体のQRS波形と胎児QRS波形が重なる部分においては、前後の胎児QRS間隔から胎児のQRSの存在を推定するアルゴリズムを採用した。以上の手法を用い、胎児QRS波形から胎児心拍数をリアルタイムに表示する機能を有するプログラムを開発した。帝王切開術において、本研究で開発した胎児心電図モニターの実用性を検証した。その結果、母体の体表電極では、有効な胎児心電図波形が得られるのは約60%の症例であり、モニタリングとして確実に胎児心電図波形を得るためには、子宮表面に電極を設置する必要があると結論した。