研究課題
本研究の目的は、体外循環後に発生する脳高次機能障害を早期に検出するための新たなモニタリング法を確立し、それを基に理想的な周術期脳管理法を構築することである。<方法>インフォームドコンセントの得られた体外循環(CPB)下の開心術予定症例において、術中、術後の脳内酸素化状態を近赤外分光法(NIRS)と、内頚静脈酸素飽和度(Sjv02)を用いて連続的に測定するとともに、S-100β蛋白とモノアミン類を(1)CPB開始前、(2)終了直後、(3)5時間後、(4)24時間後、(5)48時間後に測定し検討した。S-100β蛋白はモノクロナール抗体法で、GABAとグルタミン酸はHPLC法で測定した。脳高次機能は、(1)手術前日、(2)終了7日後、(3)退院時にMMSE検査を行った。<結果・考察>今回の検討において、体外循環導入時と復温時、脳分離循環導入・離脱時、超低体温下完全循環停止時に脳内ミトコンドリアの有意な還元が認められ、脳障害発生と有意な相関が認められた。しかし、Sjv02値と脳障害には相関が認められなかった。体外循環終了5時間後以降のS-100β蛋白値は、重篤な脳障害(昏睡、麻痺)と有意な相関を認めた。脳高次機能障害に関しては、どのモニタリング値とも相関が得られなかった。今回の検討でミトコンドリアの還元化に対し、マンニトールの急速静注とバルビタールの大量療法を行ったところミトコンドリアの再酸化に成功し、術後の脳障害が回避できた症例を数例経験した。このことは、脳内ミトコンドリアが脳管理の指標になることを示したものと思われる。通常の体外循環下の開心術において脳内ミトコンドリアの還元時期はある程度予想できるため、脳モニタリングが無い状態でも脳指向型の管理は可能であると思われた。今後は、脳指向型の管理により脳障害発生がどの程度軽減できるのかを検討していく予定である。
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