研究課題
基盤研究(B)
本研究の目的は、体外循環後の脳障害を早期に検出するための新たなモニタリング法を確立し、それを基に理想的な周術期脳管理法を構築することである。インフォームドコンセントの得られた体外循環下の開心術予定症例を対象に、脳障害の発生を早期かつ正確に検出できる脳モニタリング法(近赤外分光法、内頚静脈酸素飽和度、S-100β蛋白)に関して検証した。体外循環中や終了直後のS-100β蛋白値の上昇と脳障害との関連は低く、終了5時間以降に限ってのみ、脳障害の重症度と相関を示した。このことから、S-100β蛋白は脳障害発生の早期マーカーとしては適当ではないと思われた。今回の研究の結果、重篤な脳障害に関しては、cyt.ox.の還元パターンが、その発生を正確に検出できることが示された。しかし、SjvO2値と脳障害には相関が認められなかった。さらに、cyt.ox.の還元パターンを指標に積極的な脳管理を行うことにより重篤な脳障害を回避できる症例も経験した。脳高次機能障害に関しては、どのモニタリング値とも相関が得られなかった。動物実験においては、脳内cyt.ox.の還元状態を指標に積極的な体温管理が行うことにより、完全循環停止状態においても有効な脳保護効果を期待できることが示された。本研究では、脳障害を早期かつ正確に検出できる脳モニタリング法として、近赤外線分光法のcyt.ox.の酸化-還元状態が有用と結論した。さらに、体外循環中に脳障害が検出された場合、積極的な脳保護療法の一つとしての軽度低体温療法や脳浮腫療法をcyt.ox.の酸化-還元状態測定下に推し進めていくことの有用性が示された。今後は、本研究を基に体外循環中の脳障害に対してcyt.ox.の酸化-還元状態を指標に有効な脳保護療法を検討すると同時に、脳指向型の周術期脳管理法を構築するための基礎及び臨床研究を進めていくつもりである.
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Anesth Analg 98
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