研究概要 |
本研究の目的は、racemic ketamineと比べて強い鎮痛作用、睡眠作用を持つS(+)-ketamineの硬膜外投与と全身麻酔薬を同時使用した場合の循環に対する作用の機序を解明することである。 Whole animal studyとしてイソフルレン麻酔下のウサギにracemic ketamine, S(+)-ketamineを1μg/kg静脈内投与または硬膜外投与したときの動脈圧、心拍数、His束心電図上のA-H伝導時間、腎臓交感神経活動の変化を調べた。薬剤投与前と投与後効果が最大となる約30分にnitroprusside, phenylephrineでそれぞれ人為的低血圧、高血圧を作成し圧受容体反射の感度の評価を行った。Racemic ketamine, S(+)-ketamineともに静脈内投与では約20%の腎交感神経活動減少を認めたが、S(+)-ketamineの硬膜外投与では約70%の減少が見られ、racemic ketamineの約1.5倍の交感神経抑制作用を示した。 摘出潅流心による実験ではウサギ摘出心をランゲンドルフ潅流システムに装着して左心室内に圧力測定用バルーンを挿入してdV/dtを測定し、心室にタングステン電極を刺入してQRS, QT時間を測定し、潅流液中に種々の濃度のracemic ketamine, S(+)-ketamineを投与しdV/dt, QRS時間,QT時間のdose-response curveを作成している。 Patch clamp studyはラットの星状神経節ニューロンにおける麻酔薬とオピオイドがGABA_Aチャンネル電流に及ぼす影響を調べる予定であったが、細胞のコンタミネーションのため現在はmicro glia cellを用いてATP誘発電流を測定しており、インフルレン、recemic ketamine, S(+)-ketamineを潅流液中に加えた時の電流変化を検討中である。
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