研究概要 |
脳血管障害や脳外傷後の重度の遷延性意識障害に対する脳甦生賦活またはリハビリ再生法としての音楽運動療法の意義を本年度購入の脳波・心拍リアルタイム装置(MemCalc/Meakin2,GMS社製)を用いて情緒バイタル指数を中心に医学的見地より検証した。音楽運動療法に際して実施するトランポリン上下動はたとえ寝たきりに近い患者でも、介助下坐位で実施可能な運動で、廃用萎縮予防で早期から行える。今回の研究で交感神経活動度は全く変動なく安全で、意外にも副交感神経活動面での賦活効果が認められた。その上、情動面でも‘うっとり心地よい気分'にさせていることが会話可能な患者やボランティア正常体験者の事後調査で分かっている。また別施設で実施した例で、パルスオキシメータで血中酸素飽和度が安静臥位時に93〜89%の患者が演奏下でゆったりしたトランポリン上下動を加えると、97〜99%と上昇することも経験している。また安静時には閉眼している意識障害患者が上下動と共に大きく両眼を見開き周囲をキョロキョロする仕草も、光トポグラフイでみると、障害側の前頭部で酸素需給面での活動がみられることから、二足歩行時と同様に脊髄を介する脳へのインパルスが平衡バランス感覚を呼び戻していることを推測させる。また同時に演奏される音楽は、この様な集中力誘発状態下(覚醒)では聴覚刺激として受け入れ易い。これら快感刺激が大脳辺縁系などの感情中枢の活性にもつながり、内分泌系に好影響を及ぼすものと考えらえる。左右脳波の変動はMakin-MemCalc Systemで採取のうえ解析した.一方、心臓リズムの解析すなわち心拍変動の連続測定(自律神経活動度)をLRR-03/MemCalc Systemで併せて行い、得られた時系列数値を分析することで、これら重度の意識障害患者でも情緒・感情面の微妙な表現信号を発していることも含めて分析結果が得られた。音楽運動刺激が情緒バイタル指数を中心にした検討でも大脳辺縁系などの感情中枢の活性にもつながり、内分泌系に好影響を与えることが証明されたと考える。
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