研究概要 |
平成14年度 A;ヒト腎癌細胞に対する遺伝子導入、RNAi法による糖鎖リモデリングの試み 1.ヒト腎癌由来細胞(TOS-1)に対してGM3合成酵素遺伝子導入を行ったところ、GM3発現過剰細胞株が得られた、それらの細胞ではコントロールMock細胞と比べ、増殖能に変化は認められなかったが、浸潤アッセイにて浸潤能が低下すことが判明した。また、過剰発現のGM3は細胞表面にパッチ状に発現することが確認され,マイクロドメインとして発現していることが示唆された。GM3より長鎖の糖鎖抗原の発現の変化は認められなかった。 2.ヒト腎癌由来細胞(TOS-1)に対して、GM3→GM2の合成を阻害し結果的にGM3過剰発現させる目的で、GM2合成酵素2本鎖RNA導入によるRNA i(RNA interference)を試みた、その結果TOS-1細胞のGM3発現量は増加、浸潤能が低下することが認められた。この方法では、一過性ではあるが、確実にTOS-1細胞のGM3発現量を増加できることが判明した。また、1と同様、形態学的にGM3はマイクロドメイン構造の中に発現していることが示唆された。 B;ヒト腎がん細胞マイクロドメインに及ぼすSialyl-Sphingosineの効果 3.ヒト腎癌由来細胞(ACHN)に対して、マイクロドメインの構造改変因子であるS-Sph(sialyl sphingosine)を用いて、処理したところ、毒性のない濃度でACHN細胞の浸潤抑制が、認められた。しかし糖鎖(グロボシド、Lac Cer, GM1)に対する接着能はS-Sphにて抑制されなかった。 また、ACHNマウス腎癌肺転移モデルでは、S-Sph処理による、明らかな肺転移抑制作用が認められた。
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