研究概要 |
【目的】現在まで腎癌ではganglioside GM3より長鎖ガングリオシド(GalNac disialyl Lc4.,monosialyl galactosylgloboside)の発現が多く認められる症例では予後が悪いことを報告してきた。本研究では長鎖ガングリオシドを発現するヒト腎細胞癌TOS-1を用いて、GM3合成酵素の遺伝子導入、あるいはsiRNAによるGM2合成酵素の発現阻害による糖鎖のリモデリング、および運動能に及ぼす影響を検討した。 【方法】当科で樹立したTOS-1に対し、GM3合成酵素遺伝子を遺伝子導入、糖鎖リモデリングを試みた。フローサイトメトリー、レーザー顕微鏡にて糖鎖抗原の発現様式の変化を検討。Transwell Chamberを用いて、運動能の変化を検討した。同様にヒト腎細胞癌TOS-1を用い、ganglioside GM2の発現を糖転移酵素β1,4 GalNAc transferaseをsiRNAでノックダウンすることで制御することを試みた。RT-PCRで糖転移酵素を定量するとともに、フローサイトメトリー、レーザー顕微鏡にてGM2の発現を調べ、浸潤能および運動能に及ぼす影響を検討した。 【結果】遺伝子導入にてGM3高発現クローン300No7を樹立した。300No7はMock TOS-1に比して増殖能が低く、GalNac disialyl Lc4の発現も減少していた。GM3は細胞表面にclusterを形成して存在し、300No7の運動能は明らかにMock TOS-1より低下していた。また、どちらの細胞もCD9を強発現していた。 siRNAによりGM2の発現は著明に抑制され、GM2がノックダウンされたTOS-1細胞は、コントロールに比して明らかな浸潤能運動能の低下を認めた。 【結論】細胞膜に高発現したGM3はCD9との共存在下で運動能抑制を引き起こしている可能性が示唆された。siRNAによるGM2遺伝子発現の制御は、腎癌における糖鎖リモデリングの有力な手段になりうると示唆された。
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