本邦における家族性前立腺癌家系の収集を行い、臨床的および分子生物学的な検討を行った。インフォームドコンセントの元に、家族性前立腺癌患者より全血7ccを採取し、ゲノムDNAを抽出した。10ng/ulにて保存した。コントロールは非癌患者よりDNAを抽出した。2002年に報告された遺伝性前立腺癌における責任遺伝子の候補であるRNASELの多型を中心に遺伝子解析を行った。まず、SSCP法により全コーディングシークエンスの変異のスクリーニングを施行した。ここで、家族性前立腺癌1症例でG282Aの変異が発見された。この変異はアミノ酸配列を変化させない変異であることが判明し、この同胞では同変異が発見されなかったことにより、遺伝性前立腺癌における意義は不明と考えられた。その他の変異はG1385AおよびT1623Gの変異であった。この2者は頻度が多く、欧米で報告されたのと同一のpolymorphismであった。この、多型に関して今後、コントロールとの差からオッズ比を検討する必要がある。さらに、多型情報データベースから同遺伝子の多型のデータベースサーチを行い、これまで報告された多型の状況を検討した。 さらに、アンドロゲンレセプターのエクソン1におけるcagリピートの多型や5α還元酵素における多型、エストロゲンレセプターにおける多型をGenBankから塩基配列をもとにシュミレーションし、必要な制限酵素や、homozygoteおよびheterozygoteのパターンを想定した。今後、これらの多型を実際に解析していく。
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