前立腺癌の発症要因には外的な要因と内因的な要因の両者が関与している。この中で、家族歴は明らかに、リスクを高める因子として同定されている。群馬大学関連施設における家族性前立腺癌の家系の調査により、欧米と同様に遺伝的素因の強い家系が同定されている。この家系における遺伝子解析により前立腺癌の責任遺伝子およびgenetic susceptibilityの追求への端緒となる可能性があり、われわれは本研究において従事してきた。これまで発表された候補遺伝子としてのHPC2/ELAC2およびRNASEL遺伝子の関与とともに、連鎖解析によるlp35-36および8p23の領域に関連する連鎖を認め、さらなるfine mappingにてDIS2667およびD8S550の2領域にZlr2.24および2.25の有意な連鎖を発見した。lp35-36はCAPBという欧米からの報告された部位と一致しており、脳腫瘍を合併する家系での前立腺癌領域との関連が示唆されている。今回は、更なる家系の家族歴の再チェックを行ったが、脳腫瘍との有意な関係は見出されなかった。次に、8p23における遺伝子候補としてMSR1(macrophage scavenger receptor 1)がこの部位に存在するために、この遺伝子の変異をdirect sequenceにて確認を行った。今のところ、明らかな変異との関係は見出されていない。しかし、coding lesionのすべての解析が終了していないので、今後さらに、この遺伝子の変異の研究は、非常に重要である。さらに、この領域ではsqualen synthaseというコレステロール合成酵素があるため、コレステロール合成酵素のアンドロゲン依存性をmRNAレベルで検討した。この結果、一部は、アンドロゲン依存性を示す可能性が示唆されている。今後、squalen synthaseを含めた、合成酵素遺伝子の変異の確認が必要であることが示唆された。
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