研究概要 |
平成14年度は主に低酸素応答転写因子結合部位(Hypoxia Responsive Element : HRE)の遺伝子配列に合わせたピロールイミダゾールポリアミド(8塩基対相当)の合成を行った。本研究に使用するポリアミドはこれまでの研究に用いてきたものよりも長いため、安定した合成法の確立に手間取ったが、杉山によりほぼ安定した固相合成法を完成させることができた。平成15年度以降、このポリアミドを用いて細胞、およびマウスでの血管内皮成長因子(VEGF)の発現および腫瘍の増殖抑制についての検討をすすめる予定である。またポリアミドの合成法を確立する間、基礎検討として泌尿器科領域腫瘍での低酸素応答転写因子の意義を探るため、低酸素応答転写因子の一つであるEPAS1について主に免疫組織化学的検討を行った。もともと低酸素応答転写因子は腎臓癌での発現が極めて高く、その豊富な血管新生の原因の一つになっている可能性がありこれについては既に我々の施設より国際誌に報告している。ここでは浸潤性膀胱癌の腫瘍先進部でEPAS1の発現が高く、腫瘍の進展に関わっている可能性があることを泌尿器科国際誌に報告した(Urology,; Xia G, Kageyama Y,他)。さらに腫瘍周囲のマクロファージでのEPAS1の発現が腫瘍の進展度と関係していることを示し、これは2003年度のアメリカ泌尿器科学会に受理され発表予定である(Koga F, Kageyama Y,: Kihara K他: HIF2-α/EPAS1 expression by tumor-associated macrophages is related to poor prognosis of invasive bladder cancer patients)。
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