平成15年度に作成に成功したHypoxia Responsive Element(HRE)の中心配列に相補的な3種類のアルキル化ピロール・イミダゾールポリアミドの転写阻止能を検討した。同じく平成15年度に構築したLuciferase assayによる評価システムを用いた。低酸素応答分解ドメインを欠失させたHypoxia inducible factor 1 alpha(HIF 1 alpha)、Hypoxia inducible factor 1 betaおよびエリスロポエチンのエンハンサーを組み込んだリポーター遺伝子を293細胞に導入しこれにポリアミドを作用させた。対象としてbeta galactosidase遺伝子も同時にTransfectした。合成したポリアミドを様々な濃度、組み合わせで検討した結果、3種類を同時に作用させた時のみ有意にHIF-1 alphaにより転写を抑制されること、特異的な転写抑制を得るためにはポリアミドの総濃度が2.5microM前後が至適であることなどが判明した。この結果を踏まえて、ヒト腎癌細胞A498に3種のポリアミドのカクテルを作用させたところ3日間の暴露でVEGF遺伝子の転写が約50%抑制されることが判明した。現在ELISAにてVEGF蛋白の産生が抑制されることを確認中であり、最終成果として国際誌に発表する予定である。ポリアミドは細胞膜を自由に通過、また経口投与でも十分作用が期待できるため、腎癌の治療法の開発につながる重要な知見が得られたものと考える。
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