研究概要 |
平成15年度は尿路上皮癌細胞での研究を継続すると共に腎細胞癌での検討を進めた. A.移行上皮癌細胞での検討 1.移行上皮癌細胞におけるアンチセンスオリゴDNAによるXIAP発現の抑制と,殺細胞効果の検討. T24に対してXIAP遺伝子転写開始部位から20merに対するS化オリゴヌレオチドによる,XIAP発現の抑制を行ったところ濃度依存的に生細胞数が87%まで減少した. 2.XIAPに対するS化オリゴヌレオチドとアドリアマイシンの殺細胞効果.両者を同時にT24細胞に作用させたところアポトーシスの亢進による殺細胞効果の増強を認めた. 3.XIAP高発現株における検討. T24へのXIAP遺伝子導入により強制発現した細胞株では上記の条件での検討で親株に比して顕著ではないものの統計学的に有意な耐性を示した. 以上より,S化オリゴヌレオチドによるXIAP発現の抑制は移行上皮癌の抗癌剤に対する耐性克服の手段となりうることが示された. B.腎細胞癌での検討. 1.腎細胞癌手術切除標本における検討 108例の腎細胞癌症例からの手術切除標本についてXIAPの発現につき免疫組織学的に検討した.この結果13例で陽性,20例で弱陽性,75例で陰性であった.これら症例の生存期間を調査したところ,5年生存率は陽性例で36%,弱陽性62%,陰性89%で統計学的に有意差を認めた.また,組織学的悪性度やT分類と相関し高度に発現していた.多変量解析では,組織学的悪性度やT分類とは独立した予後規定因子と考えられた.
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