研究概要 |
本研究は泌尿器科癌細胞でのアポトーシス機構の解明,特にアポトーシス実行タンパク分解酵素であるカスペース-3,7の抑制分子であるXIAPに着目し,この機能制御による泌尿器科癌における新たな治療法の開発に目的とするものである. 今回のXIAPについての検討結果は以下のとおりである.<尿路上皮癌における検討>尿路上皮癌においては以下のことが明らかになった.1.XIAPは正常移行上皮では表層の細胞に強く発現されていた.2.尿路上皮癌108例中79例でXIAPの発現が見られたが,腫瘍の病期や組織学的悪性度とは関係は見られなかった.3.細胞株による検討では4種の細胞株(SCaBER, HT1376, T24 and RT4)すべてで発現を認めた.4.このXIAPをアンチセンスDNAで発現抑制をするとアポトーシスが誘導され,生細胞の率は87%まで低下した.またアドリアマイシンとの併用で相加効果を認めた.5.細胞株T24に対するXIAP発現ベクター導入による強制発現の結果アポトーシス刺激に抵抗性となった.以上より,尿路上皮癌ではXIAPの発現が抗がん剤等のアポトーシス刺激にたいする抵抗性を規定する分子となっていると考えられる.<腎細胞癌における検討>1.正常腎組織では近位および遠位尿細管に弱い発現が見られた.2.腎細胞癌では108例中33例に発現を認めた(20例は弱く,13例は強度に).3.これら3群での5年腫瘍特異的生存率を検討すると陰性89%,弱陽性62%,陰性36%と統計学的に有意差を認めた.以上より,腎細胞癌においてはより直接的なXIAP発現と腫瘍細胞の悪性度との関係が示唆された.<継続している研究の内容>XIAPに対するsiRNAを作成しそのXIAP発現抑制効果の検討と,各種アポトーシス刺激への感受性の変化を検討中である.
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