研究概要 |
腫瘍細胞におけるアポトーシス機構における分子相互関係の解明は,新たな治療法の開発に寄与する可能性がある.本研究は腫瘍細胞において抗アポトーシス分子として機能する可能性のあるXIAPの泌尿器科癌での発現,機能,さらに発現制御による新たな治療法の開発につなげることを目的とした.<XIAPに対するshort interference (si) RNAの作成>昨年度の研究結果からアンチセンスDNAでの発現抑制効果は,対照と比して十分でない可能性があり,より遺伝子発現抑制効果のあるsiRNAの作成を目指した.候補の遺伝子配列を3種選び,これをsiRNA発現用ベクターに組み込んだものの細胞株へのtransient transfectionにより検討した.この結果,ひとつのシークエンスが最も抑制効果があると思われた.<stable transfectantの作成>この発現ベクターを腎癌細胞株Caki-1および前立腺癌細胞株LNCapにtransfection, puromycinによる選択により,十数個のクローンを得た.現在,これらstable transfectantの各種アポトーシス刺激に対する感受性を検討中である.<腎細胞癌におけるXIAP発現とCRP, interleukin (IL)-6およびtumor necrosis factor(TNF) pathwayとの関係の検討>今回の検討の中で腎癌組織でのXIAPの発現と,患者血清中のCRPの値との間に相関が見られた.細胞株での検討では培養上清中に高濃度のIL-6,TNF-alphaを分泌し,かつXIAPを高発現する細胞株が同定された.このことはTNF-alphaの刺激伝達系を阻害することが,siRNAと併用することでXIAPのより完全な発現抑制につながる可能性があり,現在検討中である.
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