研究概要 |
マウス精母細胞株GC-2spd(ts)に由来する、減数分裂を起こすと考えられるクローンGC-2M細胞を用いて、以下の成果を得た。 1.減数分裂の解析 GC-2Mを32度で培養してRNAを抽出し、RT-PCR法により、精子形成細胞の分化に応じて通常発現している遺伝子、cot-4,rad51,rec8,SCP-3,Dmc1等の発現状態を解析したが、検出できなかった。相同染色体を顕微鏡で観察したが、対合は明らかではなかった。GC-2Mのカリオタイプ解析では、染色体数74-75の細胞が多く、染色体数20前後のハプロイド細胞は認められなかった。フローサイトメトリーでDNA量を再測定したところ、GC-2M細胞とマウス胸腺細胞との比較から、2nと思われたピークが4nであることが判明した。 GC-2M細胞は単一細胞からのクローンである。4n、8nの細胞群をセルソーターで分離し、単一細胞として培養した後、フローサイトメトリーでDNA量を測定した。その結果、どちらも2nへ変化しうることが示された。つまり、GC-2M細胞はテトラプロイドで増殖する細胞群が主で、一部が正常とは異なる機序でまれに染色体数を半減させると考えられた。 2.モノクローナル抗体の作成 GC-2M細胞膜を抗原として雌マウスを免疫し、精子形成細胞を染色するモノクローナル抗体を10種得た。抗体が認識している蛋白質遺伝子の発現クローニングを試みたが同定できなかった。 3.ヒトdysgerminorma細胞株の樹立 ヒト卵巣dysgerminoma臨床例から細胞株を樹立した。染色体は46,XXで、免疫不全マウスに腫瘍を作る。生殖細胞のマーカーであるvasa遺伝子を発現し、c-kitがん遺伝子が活性化している。dysgerminomaの発生機序、治療法の開発、生殖細胞の増殖、分化機序の解析等に有用であると期待される。
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