研究概要 |
本研究の第一の目的は剖検で発見された潜在癌と臨床の場で治療された顕性癌における前立腺癌のゲノム一次構造異常を比較検討することである。これまで29例の未治療顕性前立腺癌をCGH法にて解析し、13番染色体長腕の欠失頻度がこれまでの欧米の報告に比べ有意に低いことを発見し、現在投稿中である(Matsuda, K. et al. The low frequency of 13q loss in Japanese prostate cancers)。またマイクロアレイによるCGH法をもちいて11例の顕性前立腺癌における染色体上283領域の網羅的解析を行い、従来のCGH法との比較をおこなった。その結果コピー数の減少(欠失)した領域におけるマイクロアレイ法とLOH解析との一致率は従来のCGH法とLOH解析との一致率に比べ、有意に高率であった(93%vs.72%)。この結果は現在投稿中である(Yano, S. et al. Accuracy of the new array CGH technique in detecting DNA copy number aberrations)。 本研究の第2の目的は抗EGFR (epidermal growth factor receptor)抗体阻害薬(ZD1839)をホルモン感受性(LNCaP)および抵抗性前立腺癌細胞株(PC3)に投与することによりその抗腫瘍効果を検討するとともに投与前後のシグナル伝達系経路の違いより、ホルモン抵抗性前立腺癌のメカニズムを解明することである。これまでにin vitroモデルにおける細胞増殖曲線の検討でZD1839は両株とも1μM,10μMの濃度でコントロール群に比べ有意の増殖抑制効果を認めたが、その効果はLNCaPにおいて有意に高かった。今後薬剤添加前後の細胞より抽出したtotal RNAをもちいたマイクロアレイ法にてシグナル伝達系経路の解析を予定している。
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