研究課題
DNA傷害チェックポイントの解析にあたり、まず、チェックポイントrad(rad3)遺伝子、mik1Δwee1-50という遺伝子の変異に、減数分裂を温度変化で誘導できるpat1遺伝子の変異をくみ込んだ二倍体株の作製を行った。次に、これらの変異株を用いて、DNA傷害を与える薬剤として、メタンスルホン酸メチル(MMS)を加え、濃度依存的、経時的な核の数的、形態的な変化をDAPI染色法によって観察した。rad3変異のある細胞株においては、温度シフトにより同調的に減数分裂を誘導して、2時間後に0.01%MMSを加えると、胞子形成率(減数分裂を完了できる細胞数の割合)は、コントロール群が約20%であるのに対して、変異株では約45%であり、有意な差を認めた。また、この割合は、濃度(0%から0.02%)依存的であり、やはり変異株群の方が、胞子形成率が高い傾向にあった。mik1Δwee1-50は、cdc2のTyr15をリン酸化できないような変異体であるが、このような変異体にrad3変異をくみ込んで、0.01%MMSの条件下で減数分裂を誘導させると、rad3変異がない場合は、ほとんど胞子形成しない(2%)が、rad3変異があると、約14%の胞子形成率(減数分裂誘導から6時間後)を示した。これらの結果より、減数分裂期におけるDNA傷害チェックポイントには、チェックポイントrad遺伝子がcdc2のTyr15のリン酸化を通じて関与している可能性が示唆された。