研究概要 |
進行癌に対する低侵襲性かつ有効性の高い治療法の開発を目的として、血縁健常者末梢血幹細胞より成熟樹状細胞を誘導し、細胞免疫治療の確立を試みた。 研究初年度に当たる平成14年度は、腫瘍特異抗原決定基蛋白(epitope peptide)の同定を中心に行い、melanoma antigen(MAGE)-3に対するHLA A-2,A-24に対するエピトープペプチドを確立、また前立腺癌を標的として、前立腺膜抗原(PMSA)に対するHLA A-2,A-24拘束性エピトープペプチドを新たに同定した(Clin Cancer Res. 8:3885-3892,2002)。これらMHC class 1拘束性エピトープペプチド負荷により、より有効な患者側CTLが誘導されること、臨床的有効性が期待できることなどが基礎研究により示された。 平成15年度は前年度より遂行していた末梢血単核球(PBMC)より誘導した樹状細胞(DC)に各種HLA拘束性エピトープペプチドをpulseした細胞免疫治療を膀胱癌、前立腺癌、腎細胞癌を対象に継続的に実施した。各癌種においても50%以上の腫瘍の縮小効果を認めた症例が存在し、本治療の有用性が確認された(表1および表2)。また、新たな腫瘍特異抗原の同定をSEREX(serologic identification of recombinant cDNA expression cloning)法にて行い、2種の膀胱癌に高い特異性を示す癌抗原が同定に成功し、さらにその抗原に対するHLA拘束性エピトープペプチドの作成も同時に実施した(Int J Cancer,108:712-724,2004)。 本研究の主目的である同種末梢血幹細胞よりの樹状細胞の誘導に関しては、磁気細胞分離システムの使用により、CD34陽性造血前駆細胞(造血幹細胞)の分離が85.3%の高純度で分離可能であり、本システムの導入により細胞調整の純度の効率化が計れることが明らかとなり、また、CD34陽性造血前駆細胞より誘導された樹状細胞が同種のドナーに与える影響を一卵性双生児とその親ならびに非血縁者とでリンパ球混合培養(MLC)と同様の方法により検討中した結果、成熟樹状細胞は非血縁者末梢血リンパ球との間のrejection試験ではstimulation indexは3.6と同種リンパ球に比較して著しい反応が認められず、敢えて同種CD34陽性造血前駆細胞の必要性が無い可能性が示された。
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