子宮内膜における幹細胞の存在を証明することを目的とした。まず、フローサイトメトリーとHoechst33342を用いた免疫蛍光染色を用いて、子宮内膜における幹細胞の候補細胞を紫外線励起したHoechst RedとHoechst Blueの波長で分離する実験を行った。しかし、この直接的な方法については紫外線励起が可能な特殊なフローサイトメトリーを継続して使用することができなかったため、間接的な証明を試みた。方法として、異所性の子宮内膜症を用いて、組織中のDNAを抽出、X chromosomeのmethylationによってクロナリティーを解析した。もし、幹細胞が卵管経由で移植され、その増殖によって異所性子宮内膜が形成されるのであれば、腺腔を形成するすべての細胞が同じクロナリティーを形成するはずである。この仮説を検証するために腹膜子宮内膜症の腹膜病変中の個々の腺腔をレーザーマイクロダイゼクションの手法を用いて別々に摘出し、クロナリティー解析を施行した。結果は個々の腺腔はモノクローナルであるが同じ病変内の隣り合う腺腔は別のクロナリティーを持つことが明らかとなった。これらの結果は、腹膜子宮内膜症の腹膜病変は多細胞由来であり、単一の幹細胞に由来するものではないことを示していた。続いて、同じ子宮の構成要素である、子宮筋層の平滑筋細胞における幹細胞を証明するために、横紋筋の幹細胞とされるサテライトセルを分離するのに使用されるPre-platingという特殊な培養条件を応用することにより平滑筋幹細胞の分離を試みた。しかし、増殖条件が難しく、現在まで培養には成功しておらず、以上、子宮内膜および子宮平滑筋に幹細胞が存在するという証拠は得られなかった。
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