研究概要 |
1.EVT-脱落膜相互作用を中心とする着床の分子機構の解明 この分野では、ヒト妊娠初期胎盤より分離培養した絨毛外栄養膜細胞(extravillous trophoblast, EVT)におけるprothrombinase (FGL2)の発現の検討に着手し、以下のような知見を得た。(1)培養EVTにおいてRT-PCRによりFGL2-mRNAの発現を認めた。(2)EVT培養上清のWestern blottingにより、prothrombinのthrombinへの変化を確認した。(3)妊娠初期胎盤のin situ hybridizationにより脱落膜中に浸潤するEVTにFGL2の発現を認めた。これらの結果から、EVTにFGL2が発現しており、EVTの浸潤と増殖とを調節している可能性が示唆された。 2.母児接点におけるウイルス感染機構の解明 この分野ではまず、trophoblastの分化がherpes simplex virus感染機構に及ぼす影響についてめ知見をまとめ、論文を発表した。次にhuman cytomegalovirus(HCMV)感染がEVTの機能に及ぼす影響についての研究を進め、以下のような知見を得た。(1)EVTはHCMV感染を高率に許容する。(2)HCMV感染はEVTの浸潤能を低下させる。(3)HCMV感染はEVTのMHC class I発現を低下させない。(4)HCMV感染EVTにおいてはHCMVのUS2,US3,US6,US11遺伝子産物が小胞体から疎外され、MHC class I発現を抑制することが出来ない。(5)HCM感染EVTは活性化ナチュラルキラー細胞による細胞傷害性に対して抵抗性を示す。これらの結果から、HCMVはEVTを中心とする母児接点に高度に適応していることが示唆された。
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