研究課題/領域番号 |
14370534
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
寺川 直樹 鳥取大学, 医学部, 教授 (90163906)
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研究分担者 |
谷口 文紀 鳥取大学, 医学部附属病院, 助手 (40322218)
岩部 富夫 鳥取大学, 医学部附属病院, 講師 (10284001)
原田 省 鳥取大学, 医学部, 講師 (40218649)
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キーワード | 子宮内膜症 / 培養間質細胞 / 増殖・進展 / エストロゲン / GnRHアゴニスト / サイトカインTNFα / IL-8 / 転写因子NF-κB |
研究概要 |
子宮内膜症の発生と進展はエストロゲンによって促される。現在、内膜症治療にはGnRHアゴニスト(GnRHa)が使用されるが、GnRHaは下垂体でのゴナドトロピン産生を抑制し、卵巣におけるエストロゲン産生を低下させる結果、内膜症病変の縮小と疼痛症状の改善をもたらす。したがって、平成15年度研究では、内膜症間質細胞へのエストロゲンの添加はTNFαによって誘導されるNF-κBの活性化を増強し、IL-8産生を促進するか否か、GnRHa治療は内膜症細胞のサイトカイン産生を抑制するか否かについて検討した。 患者の同意のもと、腹腔鏡手術時に採取した卵巣チョコレート嚢胞壁から内膜症間質細胞をOsteenらの方法を用いて分離培養した。TNFα(0.1ng/ml)添加後の培養間質細胞におけるIL-8遺伝子および蛋白発現をNorthern blottingとELISAで、リン酸化IκBの発現をWestern blottingで、NF-κBの活性化をElectrophoretic mobility shift assayにて検索した。 GnRHa非投与症例では、TNFαの添加は内膜症間質細胞のIL-8遺伝子と蛋白発現を増加させ、リン酸化IκBの発現およびNF-κBの活性化を誘導した。E2(10^<-7>M)の併用添加は、TNFαによるIL-8遺伝子と蛋白発現、リン酸化IκBの発現およびNF-κBの活性化を促進した。一方、GnRHa投与症例では、TNFα添加によるIL-8産生とリン酸化IκBの発現誘導はみられなかった。 TNFαおよびE2のIL-8産生誘導効果はGnRHa非投与症例において観察され、GnRHa治療後の子宮内膜症細胞ではIL-8産生誘導がおこらないことを初めて見出した。したがって、GnRHa治療は内膜症細胞のサイトカイン産生を抑制して本症の増殖・進展を阻止することが示唆された。本研究成績から、子宮内膜症細胞でのサイトカイン産生に重要な役割を果たす転写因子NF-κBを標的とした本症治療の可能性が示唆された。
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