A)グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)の新生児神経障害への治療的応用を新生仔ラットを用い検討し、以下の結果を得た。 1)GDNFを永続的に分泌する細胞を半透膜カプセルに詰めて左側半球に埋め込み48時間後に低酸素虚血ストレスを負荷したところ、コントロール群に比べ障害範囲が著しく減少した。 2)エルブ麻痺ラットモデル(左側第5-7脊髄神経の節前神経を前後両根ともに切断)において、切断後GDNFをゲルフォルムに溶解して直接患部に置いたところ、脊髄前角神経の脱落と運動障害が著明に改善した。 B)フリーラジカルスカベンジャー、エダラボンの新生児低酸素性虚血性脳障害への治療的応用を新生仔ラットを用いて検討した。 1)低酸素虚血負荷後2日および5日間にわたり9mg/kgずつ腹腔内に投与した群は、10日間にわたり9mg/kg、投与した群に比べて、組織学的および行動学的により良い改善効果を認めた。 2)脳実質内にマイクロダイアライシス装置を装着し、細胞外液中の活性酸素を経時的に測定したところ、低酸素虚血負荷時に上昇し、その上昇はエダラボンの投与にて減少した。 3)7生日ラットに低酸素虚血を負荷して左側脳半球の障害を起こし6週後に非障害側である右脳半球のフリーラジカル消去能を検討したところ、非負荷群に比べて有意に低下していた。 C)徐々に進行する脳神経障害(Slowly progressive brain damage)が新たに確認された。 7生日ラットに低酸素虚血を負荷したところ、負荷5週間までは、非障害側大脳半球の代償的肥大を認めたが、それ以後、徐々に進行する障害側大脳半球の梗塞巣の増大と、非障害側大脳の代償的肥大の停止を認めた。
|