研究概要 |
本年度は、RNAi(RNA干渉)を用いて、透明帯のそれぞれのタンパクの合成を抑制することにより、卵母細胞の発育にどのような影響があるか、また、精子と透明帯の認識機構に変化が生じるかどうか検討した。「方法」[B6×DBA]F1マウス9日令より卵巣を採取し、collagenase処理により[卵母細胞-顆粒膜細胞複合体]を単離した。透明帯を構成するタンパク(ZPA, ZPB, ZPC)のそれぞれに対するsiRNAを受託合成し、卵母細胞の細胞質にマイクロマニプレーターを用いて直接注入した。対照には水を注入した。α-MEM培養液で5日間培養後、顆粒膜細胞を除去して発育卵母細胞の数と透明帯の厚みを計測した。また、ZPA, ZPCの特異抗体を用いて、蛍光抗体法を行い、タンパクの発現量を調べた。さらに、発育した卵母細胞を用いてマウス及びヒトの精子の結合能を調べた。「結果」ZPA, ZPB, ZPCのいずれをノックダウンした場合にも、卵母細胞の発育は著明に抑制された。また生存した卵母細胞においても、その直径と透明帯の厚みは対照に比較して有意に低かった。ZPA, ZPCをノックダウンした実験群において、培養後、生存した卵母細胞の透明帯に含まれるZPA, ZPC量は、それぞれ著明に抑制されていた。いずれのタンパクをノックダウンした卵母細胞においても、マウスの精子は多数結合したが、ヒトの精子はほとんど結合しなかった。「考察」以上より、透明帯を構成するタンパクのいずれの合成が抑制されても、透明帯の形成と卵母細胞の発育が阻害されることが判明した。また、これらのタンパクのうち、積極的に異種動物の精子の結合を排除する機能を担うタンパクは、存在しないことが明らかとなった。
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