研究課題
基礎的研究としては、引き続き幹細胞の聴覚路への移植について検討した。マウスの胚性幹細胞(ES細胞)を頭蓋骨髄細胞(PA6)層上で培養し、それを分離し、さらに蝸牛の感覚上皮と7日間共培養した。その結果、多数のES細胞から神経線維が伸びて毛細胞に接する像が確認され、毛細胞側面、底面との接点でsynaptophysinの発現が認められた。この結果は移植ES細胞の聴覚路神経細胞への高い分化能を示唆する。さらに、SDIA処理をしたマウスのES細胞を、アミノ配糖体とエタクリン酸で聾にしたモルモットの蝸牛軸(Rosenthal's canal)に注入し、3週後にeABR(電気刺激聴性脳幹反応)を計測したところ、ES細胞を注入しない対照群に比して低いeABR閾値が確認された。この結果は、SDIA処理ES細胞の移植が聴覚機能の回復に寄与することを示唆する。これらの結果は神経細胞への分化を誘導したES細胞を聴覚路に移植することで新たな聴覚機能が獲得されることを示唆し、聴覚神経系の臨界期の克服に向けて一つの可能性を示すものと考える。一方、人の脳機能画像を用いた研究では、聴覚正常者において18F-FDGを静脈注射し、物語を話している話者の顔の画像を見て読話によって内容を把握するように努めてもらい、その後に脳のPETスキャンを行った。また、同じ課題を負荷してfMRIでも脳機能を計測した。その結果、読話により視覚野、頭頂葉に加えて左側頭葉の上側頭回後部も有意に賦活されることが分かった。先天性難聴者において、この上側頭回の賦活が高度になると、側頭葉における視覚言語処理の優位性が推測され、音声言語習得の臨界期が過ぎたことを示す一つの指標となるものと考えられる。
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