平成15年度までの研究により、頭頚部癌において高頻度に発現しているCOX-2をプロモーターとして組み込んだ増殖型アデノウイルスによる遺伝子治療の有効性をin vitroレベルで検討した。その結果、COX-2を高度に発現している頭頚部癌培養株において、増殖型アデノウイルスによる殺細胞効果が有意に高いことが確認された。 この結果を基に、平成16年度は頭頚部癌に対する遺伝子治療法の臨床開発の第一段階として、まず頭頚部扁平上皮癌培養細胞株をヌードマウスに移植し頭頚部癌in vivoモデルの作成を試み成功した。 平成17年度は、このモデルをもちいてCOX-2プロモーターを組み込んだ増殖型アデノウイルスによる抗腫瘍効果をin vivoレベルで検討した。その結果、コントロール群に比べて有意に腫瘍の増殖抑制効果がみられた。更に、下咽頭癌93例の摘出標本を用いてCOX-2の発現を検討したところ、70例(75%)においてCOX-2の発現がみられ、本治療法が予後不良な本疾患に対する新たな治療戦略となる可能性が示された。
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