マウスの胚性幹細胞に、green fluorescent protein (GFP)遺伝子をもつベクター(pcDNAneo3.1/GFP)をtransfectionさせ、蛍光下で緑色に発色する胚性幹細胞を作成した。 そして、この細胞を蝸牛器官培養と共培養させるにあたり、hanging drop法を用いて胚様体を分化させる手技を確立した。蝸牛器官培養は、生後6日のマウスの側頭骨を摘出し、蝸牛骨壁を除去、血管条、らせん靭帯、蝸牛軸などをはずし、コルチ器を取り出した。組織の摘出は、すべてクリーンベンチの中で、清潔操作で行った。コルチ器は、培養液(DMEM F12)に浸し、37度、5% CO_2の環境下で培養を行った。胚様体は、胚性幹細胞をleukemia inhibiting factor (LIF)の非存在下にin vitroで分化させて得られ、3胚葉いずれにも分化する能力を持つ。我々は、蛍光下で緑色に発色する胚性幹細胞を胚様体にまで分化させた。胚様体をnestinを用いて免疫染色をすると、胚体外胚葉に相当する部位にnestin陽性細胞を認めた。その胚様体を一度トリプシン処理して細胞を分離させた後、蝸牛器官培養の皿へ添加して共培養した。共培養を開始して3日目の蝸牛を4%パラホルムアルデヒドを用いて1時間、4度で固定した。そして、その生着部位について、surface preparation法、プラスチック包埋による薄切標本を用い検討を行った。移植した細胞は、コルチ器の外側、支持細胞層と思われる場所に生着していることが確認できた。しかし、有毛細胞の列には生着を確認できなかった。
|