研究概要 |
本研究の目的は網膜色素変性に代表される遺伝性網膜変性疾患の原因遺伝子検索とその結果もたらされた分子病態の知見にもとづく薬物治療の可能性について検討することである。 第1の原因遺伝子検索については我々が原因遺伝子として注目していたGCAP2遺伝子変異が常染色体優性網膜色素変性の家系で見つかり、本疾患の原因となりうることを世界で初めて報告した(Sato, Nakazawa, et al, 2005)ことが挙げられる。さらに家系調査による遺伝子異常と臨床像との関連性に関する研究で、この遺伝子変異が引き起こす臨床像は典型的な網膜色素変性のみならず、黄斑変性をともなう網膜色素変性や黄斑変性のみの場合などもあることが明らかになり、この遺伝子異常がもたらす臨床像の多様性が明らかとなった。またこの変異はカルシウム依存性タンパク質をコードしていることから、この遺伝子変異により網膜色素変性が発症する場合はカルシウムイオンが何らかの関与を果たしている可能性が示唆された。 第2の目的である網膜色素変性への治療効果については、RCSラットやrd(retinal degeneration)マウスに対するカルシウム拮抗剤の治療効果が認められ、これも学術論文として報告した(Takano, Nakazawa, et al)。これらの結果から実際のヒトでの網膜色素変性の治療には視細胞保護薬としてカルシウム拮抗剤が効果を示す可能性があることが明らかとなった。さらに今年度はアントシアニンの網膜変性遅延効果を検索した。RCSラット網膜変性については網膜電図上、網膜変性が一時的に遅延する効果がみられ、これも治療薬としての可能性を示唆した。
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