研究課題
基盤研究(B)
ぶどう膜炎患者眼内浸潤細胞から樹立したT細胞クローンから、抽出した多量のRNAを用いることで、DNAマイクロアレイ法によって浸潤T細胞での遺伝子発現プロファイルを解析した。サルコイドーシスとVogt-小柳-原田病から得られたサンプルを比較解析したところ、サルコイドーシスでVogt-小柳-原田病より3倍以上の発現を認めた遺伝子はわずかに4つであり、一方、Vogt-小柳-原田病でサルコイドーシスより3倍以上の発現を認めた遺伝子は72に及んだ。そのなかで、サルコイドーシスではT細胞受容体α鎖の発現が3.4倍高く、一方Vogt-小柳-原田病ではT細胞受容体δ鎖および可溶性δ鎖の発現がそれぞれ6.2倍、5.6倍と有意に高いことがわかった。つまり、浸潤T細胞のサブセットがサルコイドーシスではαβ型、Vogt-小柳-原田病ではγδ型と全く異なることが示唆されたのである。この結果はFACS解析によって細胞表面上にそれらのT細胞受容体が発現していることを証明する必要がある。γδ型T細胞は体内のT細胞の1-5%を占め、体表面である皮膚、粘膜上皮内に存在し、類似抗原を交叉認識し応答する特性を有する先天免疫(innate immunity)を担当する。これまでいかなる眼疾患においても、眼内にγδ型T細胞が浸潤することは報告されていない。Vogt-小柳-原田病は、皮膚や眼のメラノサイトを特異的に攻撃する自己免疫疾患であるが、もともと皮膚上皮にγδ型T細胞が局在し健常な眼内には細胞浸潤がないことから、皮膚由来のγδ型T細胞がなんらかの機序で眼内に浸潤したと考えらえるかもしれない。γδ型T細胞は類似抗原を交叉認識し応答するため、メラノサイトに発現する自己抗原を類似の外来抗原と交叉認識してしまうことが発症の転機になるのであろうか。全容を解明するには眼浸潤細胞だけでなく同一患者の皮膚組織や髄液中の細胞についても解析する必要がある。
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