ヒト角膜上皮細胞、角膜輪部上皮細胞、結膜上皮細胞の凍結切片を作成し、これよりそれぞれの組織の基底層、中間層、表層細胞をレーザーマイクロキャプチャーにて採取した。ここからRNAを採取した後に競合的に増幅し、iAFLP法にて約480遺伝子について相対遺伝子発現を解析した。その結果、輪部基底層にあるとされている角膜上皮細胞の幹細胞のに特異的な発現パターンをとる遺伝子がいくつか得られた。特に特異性が高いと考えられたのは、低親和性NGFレセプターp75NTR、インテグリンα6、インテグリンα7、Bad、ケラチン18、TNFレセプター2であった。これらについて免疫染色を行ったところ、p75NTR、インテグリンα6については輪部基底細胞に特異的な発現をしていることが確認された。両者はともに細胞表面マーカーであり、セルソーターによる幹細胞の単離を行うにあたり、豚角膜上皮細胞を用いて一連の操作の条件検討を行った。その結果これまでの最高の条件にて約50%の上皮細胞がセルソーター後にも培養に十分なバイアビリティーを維持していた。p75NTRとともにNGFのシグナル伝達に関わるTrkAについても免疫染色を行ったところ、p75NTRよりも広い範囲に、非常に強い染色が認められた。ニューロトロフィンの飢餓状態はアポトーシスを引き起こすことから、NGFは角膜上皮幹細胞の生存維持にとって重要な意味を持つと考えられた。 マウスバルジ細胞を角膜上皮へ分化転換させる可能性について検討した。バルジ細胞をエクスプラント法にて培養した。通常の培養条件下では細胞は細胞質の大きい平坦な分化した細胞に変化したが、培養条件を最適化することで、小型の核細胞質比の大きな未分化様の細胞が培養でき、これらは十分に分化転換するポテンシャルを維持していると考えられた。
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