1.無細胞真皮を得るために、現在世界で使用されている米国のアロダームと韓国のシュアダームを購入した。 2.両者をHE染色、Fibronectin、Collagen IV、Lamininの免疫組織染色を施行すると、コラーゲンの構築、基底膜の残存がアロダームが優れていることが判明したため、当実験にはアロダームを使用することとした。 3.神戸大学形成外科には実験室がなく、まず部屋を確保し、クリーンベンチ、感熱滅菌器、冷却遠心機、インキュベーター、凍結保存容器、実験台などの大型器具を購入設置に1年を費やし、実験施設・機器を調えた。 4.神戸大学倫理委員会に培養表皮・培養口腔粘膜、培養毛包角化細胞と無細胞真皮使用の許可を申請し、平成15年初頭に承諾を得、将来の自家培養移植へのステップを踏んだ。 5.毛包角化細胞の培養方法を確立させるために、抜去毛包と顕微鏡下切除毛包のどちらが効率がよいか調べたところ、前者は本人の負担がなく無尽蔵に提供できるが細菌感染の危険性が高く、後者は本人の負担があり毛包提供に制限があるものの細菌感染の危険性が低いことが判明した(第2回日本再生医療学会で報告)。 6.アロダームの基底膜成分の免疫組織染色にて、上記のうちLamininのみが存在することが判明したため、アロダームをLamininでコーティングし毛包移植を試みたが、生着はしても細胞播種までは至らなかった。 7.その後、他の基底膜成分によるコーティングも試みたが細胞播種までには至らなかった。現在、新しい細胞接着因子であるアタッチンとコーティングマトリックス前処理にて検討中である。 8.一方、アロダームを利用した培養複合口腔粘膜の作製は神戸大学でも成功し、倫理委員会を通過後臨床応用に踏み切り現在も症例を重ねている(第47回日本形成外科学会総会で報告)。 9.平成15年秋に島津社のガスクロマトグラフィーを購入、3ヶ月で機器の設定が完了し、試みに毛包と毛髪の脂肪酸解析を行った。その結果、パルミチン酸が両者に多く存在すること、必須脂肪酸は毛髪にはほとんど存在しないことが判明した(第3回日本再生医療学会、第10回ケロイド・肥厚性瘢痕研究会で報告。また、今夏の2nd World Wound Healing Societyで報告予定)。 10.培養複合口腔粘膜移植患者から数ヶ月後一部採取し、この膜脂肪酸解析を行い正常粘膜に復したか否かを検討するため、現在サンプリング中である。
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