研究概要 |
頭蓋骨欠損状態の効果的骨治癒・再生方法として、ヒト間葉系幹細胞(human mesenchymal stem cells, hMSCs)及び、骨形成因子(bone morphogenetic protein-2,BMP-2)及び塩基性線維芽細胞増殖因子(basic fibroblast growth factor, bFGF)と、鋳型・担体として、ゼラチン製剤であるゲルフォームを用いて、in vitroでの骨培地(デキサメサゾン、アスコルビン酸、β-グリセロリン酸などを含む培地)での細胞増殖曲線、骨形成因子(培地中と細胞のアルカリフォスファターゼ発現)と、T細胞活性欠損ヌードラット(F344/NJCI-rnu)を用いた頭頂骨全層欠損モデルにて検討・調査した。BMP-2(50 ng/ml)、bFGF(2.5 ng/ml)の濃度にて、観察4日間中、4日目にBMP-2とbFGFを共に添加した群でのみ、有意な細胞増殖を認め(p<0.05)、骨形成因子であるアルカリフォスファターゼ(ALP)の培地中の活性も陽性細胞数も、4日目に対照群に比較して有意な上昇をBMP-2またはbFGF単独添加で認めた。BMP-2とbFGFの共添加では単独添加群よりも有意な上昇を認めた(p<0.01)。動物実験では二重X線吸収骨塩測定法による、骨塩量定量では、4週目にBMP-2とbFGF添加した群において、PBS群、幹細胞単独群に比較して、有意な骨塩増加)(p<0.01)認めた。組織像では、2週目に幹細胞単独群において塩基性のミネラル化を認め、更に幹細胞にBMP-2及びbFGF添加した群では骨芽細胞の裏打ち(lining)も認められた。4週では、PBS群にも内因性の間葉系細胞に沿って塩基性ミネラル化を認め、幹細胞単独群では層状骨形成お骨稜形成を認めた。更に幹細胞にBMP-2とbFGP添加した群では骨細胞が骨芽細胞と破骨細胞に囲まれてきておりより進行した骨再生像であった。8週目には群間の差は見られなくなった。免疫組織法にて、幹細胞にBMP-2とbFGF添加した群では著明なALP陽性となり、更に成熟骨マーカーであるオステオカルシン発現も認められた。これっら骨タンパク発現はヒト由来細胞・組織に特異的であり、移植細胞であるヒト間葉系幹細胞の分化による骨形成であると考えられた。以上から、ヒト間葉系幹細胞はサイトカインの刺激により細胞増殖・骨分化誘導し、効果な骨再生により、頭蓋骨治癒に有用であることが分かった。
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