研究概要 |
PDWHF(Platelet Derived Wound Healing factor)をWistar系ラットの血小板より調整し、同種同系ラット胸部大動脈由来血管内皮細胞、真皮由来線維芽細胞をそれぞれ培養して準備した。調整したPDWHF中に含まれるサイトカインおよび人工真皮に含浸させて移植後3、5日目に移植した人工真皮中に含まれるサイトカインについて検討したところ、PDGF, TGF-β, bFGFが検出され、特にbFGFは調整したPDWHF中に607±50ng/ml、移植後の組織中濃度も5日目で563±93ng/mlと高値であった。次に同種同系ラット背部に2.5X2.5cm大の全層皮膚欠損創を作成し、人工真皮(TERUDERMIS【○!R】,テルモ社製)を用いて治療するモデルを作成した。このモデルにおい(1)人工真皮単独移植群(対照群)、(2)人工真皮にPDWHFを0.1ml/cm^2含浸させた群、(3)人工真皮と移植床との間に培養細胞(培養血管内皮細胞、培養線維芽細胞を1枚の人工真皮当たり1.0X10^5づつ)を播種した群、(4)人工真皮へのPDWHFの含浸と移植床への培養細胞の播種を併用した群に分けてその人工真皮内への血管侵入の程度を組織学的に比較検討した。組織学的検討は移植後5日目に行った。その結果、PDWHFの単独使用では対照群と差は見られなかった。培養細胞を播種した群では移植床に著明な血管新生が見られたが、5日目では未だ人工真皮内への血管の侵入は見られなかった。それらと比較してPDWHFと培養細胞を併用した群では5日目で既に人工真皮下層に血管の侵入が認められた。以上の結果よりPDWHFと培養血管内皮細胞、線維芽細胞を人工真皮移植に併用すると著明な血管新生促進が得られることがわかり、今後人工真皮の移植と分層皮膚移植を同時に行って植皮が生着し得る可能性が示唆された。
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