研究概要 |
A群レンサ球菌(Group A Streptococcus pyogenes : GAS)はヒト咽頭部より感染し,咽頭炎,扁桃炎,肺炎などを引き起こす.GASは菌体表層構造物であるMタンパクの抗原性に基づいて130種類以上の血清型に分類され,ワクチンの開発を困難にしている.近年,組織侵襲性の激しい菌株が見いだされ,劇症型レンサ球菌感染症との関わりについて注目されている.前年度に引き続いて,細胞に付着する因子や侵入因子の解析を進めている. 並行して,劇症型発症因子をGAS以外に求めて研究を進めた.劇症型発症のシーズンは冬期であることから,インフルエンザウイルスとの関わりについて検討した.インフルエンザウイルスをマウスに経鼻感染させた後,GASを経鼻感染させるとマウスの致死性が有意に高く誘導された.電子顕微鏡および共焦点顕微鏡をもちいて観察したところ,肺上皮細胞上に発芽あるいは付着したウイルスにGASが直接結合していることが明らかとなった.さらに,ウイルスのヘマグルチニンに対する抗体を用いると,ウイルスとGASの結合がほぼ完全に阻害される結果から,ヘマグルチニンがウイルス側の付着因子のひとつであると推測した.このインフルエンザウイルスーGASの重感染マウスモデルを用いて,インフルエンザワクチンの効果を検討した.その結果,ワクチン投与群は有意に感染死を免れたことから,インフルエンザ感染後の細菌感染の発症回避にワクチンが有効であると考えた.
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