研究概要 |
骨芽細胞前駆細胞株細胞(C-26)の細胞分化過程における骨芽細胞分化関連転写因子(AJ18,Runx2,Msx2,Dlx5,Osterix),骨芽細胞分化マーカータンパク(alkaline phosphatase, osteocalcin),BMP antagonists(gremlin, follistatin)そしてfollistatinに高い親和性を有するactivinAの遺伝子発現に対するBMP-2,BMP-4またはBMP-6の影響を下記のように検討した。 1.C26にBMP-2(500ng/ml)添加または非添加で3,6,9日間培養すると,BMP-2はAJ18以外の上記の全ての転写因子および骨芽細胞分化マーカータンパクの遺伝子発現を促進していた。一方,BMP-2(500ng/ml)で6日間処理して分化を誘導したC26をTGF-β1(1.0ng/ml)で24時間処理すると,AJ18とRunx2の発現は促進された。以上のことから,BMP-2の骨芽細胞分化の誘導にはAJ18以外の全ての転写因子の発現が促進されるが,TGF-β1による分化の抑制にはAJ18とRunx2の発現が抑制されることが判明した。 2.C26にBMP-2,BMP-4またはBMP-6を0,1.0,10,50,100または300ng/ml濃度で添加すると,上記のBMP antagonistsとactivin Aの遺伝子発現は,添加後24時間で濃度依存性に増加し,いずれも100ng/ml投与後2時間から12時間以内に有意に促進されていた。タンパク合成阻害剤(cyclohexamide)で前処理してもBMP antagonistsとactivin Aの発現は影響を受けなかったことから,BMP-2,BMP-4またはBMP-6は直接にBMP antagonistsとactivin Aの発現を促進していると考えられた。follistainおよびactivin Aタンパクの培養上清中の発現量は,ELISA法で,BMP投与後72時間まで濃度依存性・経時的に増加していたことから,これらのタンパクは合成された後に直ちに細胞外に分泌されると考えられた。以上のことから,C26は,BMPによって骨芽細胞の方向に分化を開始すると,BMP antagonistsとactivin Aの発現が誘導され,これによって,BMP作用がローカルにコントロールされていると考えられた。
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