研究概要 |
哺乳類の口蓋形成では、一対の二次口蓋突起の先端上皮細胞(MEE細胞)が接着・上皮索の形成を経て消失し、左右側の間葉織が合流する。本年度はリアルタイムPCRを購入し、in vivoおよび二次口蓋突起の器官培養系でMEE細胞の挙動と関連遺伝子群の発現量の推移を検討した。ICRマウス胎仔(E13.0〜14.0)の口蓋突起を用いた培養実験では、口蓋突起同士の接触培養、非接触培養、MatriGelとの接触培養、異種組織(口唇や舌)との接触培養を行った。MEE細胞の消失までに要する時間枠はMEE細胞の分化段階に依存しており、E13.0培養開始の場合では48時間を要したが、E14.0培養開始では18時間で消失が完了した。非接触培養系での血清添加やMatriGelとの接触培養系では、MEE細胞の消失に遅延効果が認められた。従って、MEE細胞は口蓋形成初期の段階から消失に向けて方向付けられており、その進行速度は外部環境で制御を受けていることが示唆された。MEE細胞を蛍光標識(CCFSEとDiI)した器官培養実験では、共焦点顕微鏡下でMEE細胞を経時観察し、移動速度は10μm/h前後であることを確かめた。このMEE細胞の運動能と関連して、Rhoファミリー関連遺伝子の発現変化を調べた結果、口蓋形成時期に依存せず構成的に発現を示した遺伝子群(n-wasp, lom-kinese2,p160 rock, ezrin, profilin 1)と、発生時期特異的な発現を示す遺伝子群(cdc42,snail, lutheran)とが区別された。特に、filopodia形成に関連してcdc42の発現誘導、上皮間葉転換に関連してsnail(e-cadherinの負の発現制御因子)の発現上昇とlutheran(上皮細胞の基底膜との結合分子)の発現減衰が確かめられた。
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